【歌詞考察】乃木坂46二期生曲『アナスターシャ』。埋められぬ過ちの傷口とは | のら猫ひろしが坂道のぼる (のら猫ひろし)

【歌詞考察】乃木坂46二期生曲『アナスターシャ』。埋められぬ過ちの傷口とは

恋人を傷つけてしまったという申し訳なさ

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『アナスターシャ』の主人公・「僕」は、アナスターシャと国境を越えて一緒になろうとしたものの、怖じ気づきました。

『アナスターシャ』の歌詞は、そんな「僕」のアナスターシャへの申し訳なさが綴られています。

例えば、次の歌詞。

いつかアナスターシャ悲しみを訪ねよう目に浮かぶ面影心の音色を
いつかアナスターシャ埋められぬ過ちの傷口辿って愛されてたその意味に苦しむべきだと思う

面影や音色は、別れる前のアナスターシャの笑顔や笑い声を想起しました。あるいは、アナスターシャが好んで聞いていた音楽かもしれません。

主人公の「私」が、アナスターシャとの生活を楽しんでいたのは、間違いないでしょう。

そして、埋められぬ過ちの傷口や、愛されてたその意味、という表現から、「私」とアナスターシャの関係が終わってしまったことが分かります。だから、切ないです。

私、のら猫ひろしは、女性と長くても数ヶ月しか付き合ったことがありません。そのせいか、別れた女性を思い返しても、辛いとか悲しい感情はないです。ただ、楽しませることはできなかっただろうなあ・・・とは感じています。

なので、『アナスターシャ』の歌詞に、自分を重ね合わせることはできませんでした。

逆光を受けた女性のシルエット


志村けんさんの埋められぬ過ちの傷口

ここで、『埋められぬ過ちの傷口 辿って愛されてたその意味』を想像できる人物が思い浮かびました。志村けんさんです。

彼が亡くなったことで、『志村流』(王様文庫)や『変なおじさん』(新潮文庫)を買いました。

『変なおじさん』の四十六ページで、けんさんが、二十歳の頃に同棲していた彼女が妊娠したことを振り返っています。ですが、けんさんは、ドリフターズの付き人で月給数千円の身でした。

子供を育てられないということで、父親の退職金を、母親から借りて女性の親に謝りに行っています。
何かの拍子に子供ができちゃった。まだ子供なんかふざけんなっていう時代だったから、どうしようかって困ってしまい、向こうの親にもさんざん怒られた。結局、オヤジの退職金の残りをおふくろから借金して、それで先方に謝りに行ってなんとかおさめて貰った。親不孝な男だ。 〈変なおじさん(新潮文庫)46ページより〉

そういったけんさんの女性への申し訳なさは、『アナスターシャ』の歌詞を借りれば、埋められぬ過ちの傷口、ではないでしょうか。

また、当時の同棲生活を振り返った志村けんさんの胸中は、愛されたその意味に苦しむべきだと思う、という歌詞がぴったりだと感じます。

なので、埋められぬ過ちの傷口は、かつての恋人への申し訳なさになると考えました。

まとめ

  • 埋められぬ過ちの傷口とは、主人公の、恋人・アナスターシャを幸せにできなかった自責の念。
  • 主人公に、志村けんさんが重なった。
  • 志村さんは、20歳の頃の同棲相手を傷つけてしまったという心残りがある。


■アナスターシャ■
『アナスターシャ』は、乃木坂46の二期生による歌唱曲でした。乃木坂46の25枚目のシングル「しあわせの保護色」に収録されています。歌詞は秋元康さん。


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